遠野昔話の民俗誌的研究

吉川 祐子著
(民俗文化研究所代表)

2002年9月刊
A5判・390頁+口絵16頁・上製本・函入
ISBN4-87294-262-0
8800円


 「柳田國男の『遠野物語』発刊以来90年以上の歳月が流れた。…この間、『遠野物語』は遠野の民俗誌風の説話文学として独り歩きをし、この1冊から数かずの著書が生まれ、遠野解説がなされてきた。…

 本書は、遠野(岩手県)の農家に生まれ育ち、農家へ嫁いだ一人の女性(白幡ミヨシ・明治43年生まれ)の、結婚・離婚・再婚・継子養育・出産・姑仕え・ガガへの昇格、そして楽隠居、という人生を綴った生活誌であり、そこから語りの伝承文化を見つめた遠野昔話の民俗誌的研究である。…

 ミヨシさんの語る昔話も、たしかに懐かしく温かく甘い匂いのする“ふるさと”そのものである。しかし、それを伝えてきたミヨシさんの暮らしは、そんなに甘く優しいものではなかった。そうした語り手の暮らしや心情を知ってはじめて、一人ひとりが伝えようとする昔話の真意が伝わるのだと私は思う。…」(本書「はじめに」より)
【主要目次】
第1編 遠野昔話民俗誌
第1章 遠野プロフィール(ダンコツケのまち遠野/遠野で暮らす)
第2章 家督に嫁ぐ(大家族と嫁/出産と子育て)
第3章 衣食の管理(米櫃はガガの堡/衣類の管理)
第4章 生業と嫁の役割(米作りと女/畑作物の栽培と養蚕)
第5章 年中行事と嫁の休み日(寿ぎ・耕作・霊祭り・正月迎えの行事)
第6章 嫁からガガへそして語り手へ(ケグラ座への道/お姑嬶を送る/語り手への道)
第2編 語りの伝承論
第1章 語りの変容―蛇婿入り苧環型をモデルとして―
第2章 世間話と民俗意識―河童誕生譚をめぐって―
第3章 語源説明譚の生成―ハカダチとハカガリ―
第4章 記述と語り―サムトの婆様をめぐって―
第5章 遠野への提言
索引 事項・人名/昔話・世間話などの話名・話型名/書名・論文名
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