No.177  2000年8月

【 『中世諸国一宮制の基礎的研究』の定価が安いわけ】

 この本、B5判、780ページである。小社の普通の専門書と較べて、大きさが1.5倍、ページ数が2倍。ということは、普通の本の3倍。それなのに定価は9900円で、ほぼ同じである。なぜこんなことが可能なのか。理由は、出版助成金をもらっているからである。ただし出版助成金をもらっている本でも、定価が高い本はいくらでもある。
 文部省の助成金の規定には、卸売価格が原価の2倍を超えてはならないこと、原価を割ってはいけないこと、という条件がある。その範囲内ならば、定価の付けかたは出版社の自由である。本書は、その原価割れぎりぎりの定価にしてある。助成金がもらえるので、原価ぎりぎりの定価でも、なんとかなる。しかし、それでも9900円という定価はでてこない。
 それを可能にしたのは発行部数である。発行部数が500部か1000部かで、1冊あたりの原価は大きく変わってくる。1000部作れば1冊の製作原価が下がり、定価が下がるが、総経費は上がる。それによって補助要求金額が上がり、助成金額が多くなる。
 そこで、助成金額を多くするため、発行部数を多くして申請した。ねらいどおりにはなったのだが、問題は本の置き場である。前記のように、普通の本の3倍の分量の本を、普通の本の倍の部数を作るのだから、いってみれぱ6冊分である。いったい、どこに置けぱいいのだ…。岩田書院の倉庫は、既に満杯である。
 あとひとつ問題がある。定価が安いと、増刷の場合の利益率が低いため、200部程度の増刷では採算がとれない。増刷の時は、一気に定価を上げようか。
 というわけで、この内容、この分量で、この定価。これは「お買い得」です。