No.53 1996年6月
【公共図書館がいかに専門書を買えないか】
 この裏だよりNo49で、公共図書館は専門書をなかなか買えないと書いたが、その具体的な例をあげてみよう。図書館流通センター(TRC)という会社がある。ここは全国公共図書館と契約をむすび、新刊図書を、図書館用の装備をほどこして、しかも早く納品することを主たる業務としている。そのシステムとして「ストックブックス」というものがあり、それに採用されると、TRC発行の「週刊新刊全点案内」に写真つきで掲載されて、約1800余館に送付されて選書発注に利用される。その結果、何冊売れたかを見てみよう。
 岩田書院の『江戸とパリ』(15244円)、25冊仕入の9冊売れ、である。仕入冊数はTRCの担当者が経験的に、この本はこのくらい売れるだろうと思って数を決める(できるだけ返品を少なくしようとする.平均返品率は18.6%)。販売冊数は、「全点案内」掲載後5週間以内の受注数である。
 この数字を見てどう思いますか。注文率は9冊÷1800館=0.5%である。もちろん全部がこんな数字ではない。岩田書院の本でも、『盆行事の民俗学的研究』(7107円)61冊仕入、61冊売れ、『昔話の発見』(2884円)100冊仕入、98冊売れ、という例もあるので一概には言えないのだが。それにしても、たったの9冊しか売れなかったとは…。もちろん、そのごの追加注文もあるので、全国の図書館に9冊しか入っていない、というわけではないのだが、それにしても…、である。
 ちなみに「全点案内」967号(96.3)の販売実績ベスト3は、『うわさ』680冊、『おなかがヨジヨジわらい話』645冊、『たまごはいくつ?』626冊、である。

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