No.34 1995年8月
【定価が高い、という批判に応えて】
 この「裏だより」No.5でもとりあげたが、その時は、A5判・上製本の場合であった。岩田書院でも最近、B6判・並製本を何冊か出しているが、この定価が高すぎるといわれた。一般論では説得力を欠く。具体例を掲げよう。原価を公開する。

(1)制作費    
  1.組版・印刷   405,000
  2.用紙   75,000
  3.製本   55,000
  4.運送その他   25,000
(2)編集費(校正)   35,000
小計(1)+(2)   595,000
(3)宣伝費    
  1.新刊ニュース   21,000
  2.雑誌・新聞   90,000
  3.DM   80,000
合計(1)+(2)+(3)   786,000

 B6判(182×128mm)・並製本・カバー装・本文212頁・口絵8頁・700部・2500円 小社の卸価格が定価の67%なので、1冊1675円となって、上記の(1)(2)を回収するのに355冊、宣伝費を加えた(1)(2)(3)を回収するのに469冊、発行部数700部なので、約半分売れて原価回収、残りの更に半分売れて宣伝費+αを回収。そして最後の4分の1が全部売れて、やっと粗利(約30万円)がでるのだが、これも毎月の必要経費でとんでしまう。2500円という「高値」をつけても、たったこれだけである。これは発行部数が少ないためで、2000部も作ればもっと割のいい商売ができるのだろうが、そんなに売れるもんではない。売れ残って、返品の山をかかえたら、どうすればいいのだろう。
 この数字をみて、それでもあなたは「定価が高い」と文句を言えますか…。
 定価を安くすれば売れるけれど、安くした分だけは売れない。というのが、経験的に見た場合の結論です。だって必要のない人は、1000円にしたって買わない。
     
  この原価を公開したことについて、多少後悔(駄洒落になってしまった)しています。もう少し高めに書いておけばよかった。この数字は最低原価で、この他に、いろいろと経費がかかるのです(と、いまさら書いても遅いか)。

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