No.5 1993年9月
【岩田書院の本は高いか?】
 本の値段が高いといわれています。作っている本人も正直いって、そう思っていますが、製作費÷発行部数=制作原価(1冊あたり)、を基準に定価を決めてゆくと、どうしても高くなってしまいます。1冊あたりの制作原価を安くするには、製作費を押さえるか、発行部数を増やすかすればいいわけですが、そのどちらもこれ以上はできない、ということになると、われながら「しかたがない」と思うわけです。
 ちなみに、他社では、どの程度の定価をつけているのでしょうか。

・校倉書房 『幕末・維新期長州藩の政治構造』 三宅紹宣著 358頁 7725円
・思文閣出版 『曹洞宗の地域的展開』 鈴木泰山著 380頁 8240円
・清文堂 『都市史の研究 紀州田辺』 安藤精一編 400頁 7600円
・続群書類従完成会 『院政時代史論集』 槙道雄著 432頁 9800円
・高科書店 『藤原仲麻呂政権の基礎的考察』 木本好信著 320頁 6180円
・名著出版 『歴史民俗論集2盲僧』 中野幡能編 380頁 7800円
・吉川弘文館 『古代国家と年中行事』   266頁 5400円

 いずれも、A5判・上製本です。これをみてもおわかりのように、各社とも、ほぼ同じような定価設定です。すなわち、頁数×20円=定価、となります。もちろん発行部数の違いや、販売経費の違いにより、差がでてきますが、原価計算をしていくと、ほぼ似たような数値に落ち着きます。
 ただ、概して国文学系の出版社の定価は高い。国文学の専門書の発行部数は300〜500部だといいます。それにたいして日本史は600〜800部でしょうか。
 で、なにをいいたいかというと、岩田書院の本は、他社と較べてみても、決して高くはないのですよ、といいたいのです。
 なお、上記のデータは、『日本史研究』372(93.8)の広告頁からひろいました。
     
  本の広告をする時に頁数を明記しない場合が多い。『日本史研究』404(96.4)に広告をのせている出版社21社のうち、頁数を表記しているのは、岩田書院を含めて6社にすぎません。これは、頁数に比して定価が高いので、頁数を知られたくないと、出版社がみずから思っているからかもしれません。
     
  *定価についてはNo77でも再論しています。

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