No.32 1995年8月
【専門分野が違うと勝手が違う】
 岩田書院では、創立当初から、国文学関係の出版を考えていないわけではなかった。しかし当面は、日本史や民俗学を中心にして、それと重なり合う分野、たとえば、宗教学(宗教民俗学)とか、文学(説話文学)などを少しづつ出版して、幅を広げていければ、と考えていた。
 ところが、国文学の専門書は、歴史・民俗学の専門書よりも、売れないことにかけては定評(?)があって、基準となる発行部数が300部だという。これでは定価が高くなる。日本史関係だと、大学を卒業しても、その学問を職業として継続していける職場がある程度ある(大学の先生、博物館の学芸員、市町村史の編纂室、教育委員会、図書館の郷土資料室、など)、しかし国文学だとあまりないようだ。やはり、メシのタネならば、定価が高くても買わざるをえなくなるので、最低部数は確保される。
 その限られた市場に、しかも老舗の出版社が何社もあるところに、のこのこと出かけるほどのことはない、と思っている。でも、いろいろな事情があって、何冊か出すことになった。しかし分野が違うと勝手が違う。なにしろ研究者の名前を知らない、知っていても顔を知らない。これでは、内容の評価や、部数読みのカンが働かない。
     
  専門分野が違うと、広告するのにも効率が悪い。1冊だけではDMもだせません。なお、この新刊ニュースは新刊1点につき1つずつ作っていますが、No33は「津村信夫書簡来簡集」で非売品であるため、新刊ニュースを作らなかったため欠番。

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