天皇制創出期のイデオロギー
女帝物語論

古代史研究叢書B

小林 茂文 著
(早稲田大学・フェリス女学院大学非常勤講師/
1952年生まれ)

2006年12月刊
A5判・396頁・上製本・函入
ISBN4-87294-455-0
8900円 (税別)
「本書は、七、八世紀の古代国家転形期における天皇制イデオロギーの創出を、女帝を中心に検討したものである。女帝を天皇制研究の視座としたのは他でもな く、女性史への関心のみならず、周縁に位置する存在こそが中心を撃つことができるとの確信にある。女帝は皇位継承の困難時に無理な方法や論理を用いて即位 する。その無理を隠蔽して出される即位イデオロギーに、天皇制を維持するための構造の特色が顕現する。
 そもそも私の古代史への関心は、天皇制が続いていることに対する疑問から始まる。その解明を期待するが、そこに辿り着かない忸怩たる焦燥感が 支配し続けている。そのために、民衆史や社会史、中心と周縁の構図、などに可能性を見出そうとした。それなりに貴重なアプローチなのだが、天皇制の核心に 触れることができないでいた。しかし、これは民衆史研究などの方向性に誤りがあるのではなく、史料解釈の方法論=認識論の欠如によると思われる。…そうし て、天皇制そのものである中心イデオロギーと格闘しなければ天皇制は解明できないと考えて まとめた論考が本書の内容である。」(本書「あとがき」より)
【収録内容】 
序 章 歴史叙述と事実の審判−物語論による歴史の実践−
第T部 天皇制イデオロギーの創出
第1章 郊外の誕生と王権祭祀−宮の大王、京の天皇−
第2章 吉野行幸と大地の記憶−行幸による王権支配−
第3章 天と日と地の相克−天皇制神話物語の成立−
第U部 即位イデオロギーの変容
第1章 持統天皇称制物語−女帝をめぐる言説−
補 論 文武天皇即位事情
第2章 遺詔と皇嗣決定−七世紀の天皇−
第3章 宣命にみる即位イデオロギーの変容−八世世紀前半の天皇制−
第4章 孝謙太上天皇の権力
第5章 道鏡即位物語と天皇制の変容−正義は我にあり−

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