「本書は、明治維新早々に新政府が掲示し、5年後に自ら撤去した「切支丹禁制高札」について、これがキリスト教の解禁または黙許につながるものであるかどうか、を考えようとするものです。
同時に、話題の中心となる史料は、高札撤去を命じた太政官布告という法令ですが、この解釈をめぐって作成された史料の諸相、つまり官庁の公文書から、私的な書簡、日誌、旅行記、回想録に至るまでの文書・記録の広がりを見ていきたいと思います。
さらに、このような史料がどのようにして私の視野に入ってきたのか、そうした経過も本書のテーマにしたい一つです。いわばこの一件を三重構造で語ってみたいと思います。
副題として「切支丹禁制高札撤去」とともに掲げた「史料論」とは、禁制高札撤去布告の解釈のほかに、登場する史料のネットワーク、研究の進展にうながされて広がる史料の世界を表現しています。」
(本書「はしがき」より)
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