No.943(2015.12)

【日本学術振興会への応募書類】

 毎年秋になると、日本学術振興会の研究成果公開促進費の応募時期になる。いわゆる科学研究費(科研)の出版助成である。
 応募は応募者がするのだが、見積書・部数積算書は出版社が用意する。その応募要項を読むと、「複数社」から「見積書」を「徴すること」と書いてある。
 この応募、大学などの研究機関に所属している人は、その機関を通じてすることになる。そこで その機関の対応が分かれる。「複数社」なんだから2社でいいはずなのに、3社分必要、というところが多い。まあ、いいでしょう。
 見積りにあたって「部数積算書」を提出する。これは数年前からできた制度で、その本の発行部数は、どんな根拠に基づいて決めたんだ、という設問。これを書くのはいいのだか、それを相見積もりをする他の出版社にも用意させる。で、その結果が同じ部数になっていなくてはならない。ん?、これって何?。談合をやって部数を合わせろと言ってるの?。
 そもそも、同じ原稿を前にして、複数の出版社が見積りをすれば、仕様からして違ってくるはず。A社は、A5判・300頁・上製本・300部・定価9000円・見積額150万円、B社は、B6判・400頁・並製本・500部・定価5000円・見積額120万円、となってもおかしくない。でも見積比較をするには同じ仕様じゃないと出来ない。
 部数は、著者(応募者)と出版社が相談して決める。その出版社が出した仕様(もちろん発行部数も含む)による見積りが妥当かどうか相見積もりをとれ、という趣旨だろう。
それだったら部数積算書は1社分でいいはずだし、他社の積算書が必要だというなら、その積算理由は「応募者の指示による」とすべきでしょ。だから、それで大学に提出したら、学振が見本として提示している書き方で、それぞれ積算理由を書け、と言ってきた。じゃあ、談合するけどいいんだね、ということになる。
 そもそも、応募要項には、「見積書」を複数社から徴せとは書いてあるが、「部数積算書」を複数社から徴せとは、ひとことも書いてないんだが…。