No.693(2011.5)

【殉死・失踪・病死−ひとり出版社の終わりかたC】

 病死−文献出版
 栗田治美さんは、人物往来社の営業を経て名著出版の創業メンバーのひとりとなる。1974年に独立して文献出版を創立。主として西日本を中心とした地方史を出版。前2社(者)が、私と同世代だったのにたいして、栗田さんは私の大先輩。一般的に編集系の人が出版社を起こすことが多く、営業系は企画面でなかなか難しいのだが、持ち前のバイタリティーで、分厚くて定価の高い本を出し続けた。
 一年の半分近くを出張に出ていたのではないだろうか。本づくりは素人のはずだったが、やればできるものである(すみません、失礼な言い方になってます)。頑丈な体であったが、ある日、自分が癌であと半年の命だと宣告された。さあ それからがたいへん。その時点で銀行からの借金や印刷所への未払い金が約3000万円。自分の命と残務整理とが時間の勝負となった。結局その年の2003年8月に70歳で逝去。娘さんが跡を継ごうとしたが、断念。債務は奥さんがどうにか処理した。やっぱり健康が第一ということ。…栗田さん「病死」。(以下、続く)