No.419(2006.5)

2分冊にした理由】

手の内を明かそう。今度だした藤田達生編『戦場論』上下と、佐藤博信著『越後中世史の世界』『中世東国足利・北条氏の研究』は、ともに、当初全1冊の企画であった。それを、それぞれ2冊に分けて刊行した。当然、本文のページ数は2冊に分けても同じなので、編集・組版・印刷・用紙代は同じだが、製本代は2倍になる。全体では経費が余計にかかることになる。
 藤田論集は840頁あって、全1冊にした場合、500部、定価は単純に計算して17000円、これだけの定価になると売れないので、部数を絞ることになり、そのため定価がさらに高くなって2万円近くになってしまう。書名も「戦場論」。この書名だと現代の軍事論かと思われてしまう。そこで、上下2分冊にして、それぞれタイトルをつけて、「戦場論」をサブタイトルにした。これで、各冊600部、定価は7900円・8900円。これなら、当面必要なほうだけ買ってもいいし、両方買っても全1冊にした時より安くなる。
 佐藤著書は510頁。全1冊にした場合は、500部、12000円くらいか。内容的には、越後国・足利氏・北条氏、である。正直いって書名をどうするか悩んだ。越後だけ浮いてしまうのである。これでは、越後の論文を読みたいと思っても、1万円以上では買ってくれないことが、はっきりしている。そこで2分冊にした。「越後」は170頁なので、並製本の「岩田選書◎地域の中世」にして、700部、2200円。「足利・北条」は上製本の「中世史研究叢書」にして、500部、定価は6900円。2冊合わせても1万円を切る値段にした。
 本を買ってくれなければ、それにあわせて定価を高くせざるをえないが、2分冊にして読者が買いやすいように定価を抑え、それでより多く売れれば、そちらのほうが、読者も著者も出版社も、すべてがいいことになる。でも、売れないと利益率が悪いから、出版社だけが困る。それは困る…。