No.412(2006.1)

まず出版社から始めよう】

 本が売れない。いまに始まったことではない。しかし、学会に本を売りにいっても、出店している出版社の社員があまり本を買っていない。これは問題である。自分たちが買わないようなら、読者が買わないって嘆く資格はないだろう。私なんか、売り場をひと回りしてくると、どっさり買い込んできてしまう。で、結果として置き場に困る。
 でも、これは私が社長だからできるとも言えるのである。私の場合、自分で買う本はすべて会社の必要経費である。これからの企画に必要だから。でも、サラリーマンである出版社の編集・営業の人たちは、自分の小遣いから買わざるを得ない(それは読者・研究者だって同じだが)。だから、欲しいと思っても買えない、と。
 そこで、出版社の社長さんたちに提案です。今どき、社員の給料を上げるのは厳しいので、そのかわりに毎月5000円から1万円くらいの本代を支給できないだろうか。会計処理上は必要経費にできるはず。大学の先生が研究費で年間数十万円の本を買えるようなものである。社長としても、社員が本を買って勉強することは、歓迎すべきことだろう。仲間内の範囲ではあるが、売上げは確実にあがりますよ。どうでしょうかね。ま、タコが自分の足を食っているようなもんだ、とも言えますが。
 あいつめ、また余計なことを言いやがって、と同業の社長さんたちに思われるかも知れないが、前回の「裏だより」No408 で、えらそうなことを言ったので、まず、自分達ちから始めよう、というわけです。
 追記:この原稿を書いたあと、これを実践している会社があることを知った。ポット出版。その社内規定に「自主研修用書籍費◎毎月3,000円」とあった。