No.214  2001年9月

【幻の企画1992】

 岩田書院創立にあたって考えた企画があった。いまだに実現していないその企画は、岩田書院リーディングブックス」。その趣旨は、複数の執筆者の既発表論文を、あるテーマに添って集め、簡単な解説と文献目録をつける、というもの。テーマは、辞典でいうと中項目ぐらいの、絞り込んだもので、ページ数も160ページ程度に抑えて 大学のテキストにも使えるようなもの。しかも、できるだけ安くするため、新組にしないで、発表された雑誌の誌面をそのまま使って複製する。
 既発表論文を集めて本にする、というのは出版社がよくやる企画である。苦労して原稿を集める必要がないし、需要はそこそこ見込める。私が考えたのは、全何巻というような叢書ではなく、ゲリラ的に安く出していこうというもので、そのためには、経費をかけないことが必須になってくる。中味は同じなんだから、経費と労力と時間をかけてわざわざ新組にする必要はない、という考えである。
 これは、いまだにいい考えだと思っている。では、なぜ実現していないのかって?。本格的動き出そうとした矢先に、朋文出版というところが、「年次別 日本史文献集」という企画を発表した。それは、その前年に発表された日本史関係の学会誌に発表された論文のなかから、いい論文を選んで、時代別にまとめて出版しようとするものだが、これが、関係の学会から抵抗を受けた。学会誌に発表した論文をすぐ転載されては、雑誌が売れなくなるという理由である。
 そんなこともあって、出鼻をくじかれてストップしてたら、単行本の企画のほうが忙しくなってきて、それどころではなくなり、結果として、幻の企画のままになった。