No.163  2000年 3月

【在庫が売れない。なのに一気に増刷5点】

 メーカーの場合、在庫は原価換算で全て資産とみなされるが、出版社の場合は、売れない在庫は資産評価が下がる。出版業にたいする税制の優遇措置である。それがあるので、どうにか在庫を長くかかえていられるようになっている。
 岩田書院の場合もその優遇措置の「恩恵」をうけている本が多い。決算期前6か月以内に刊行された新刊は適用されないので、岩田書院の場合は、昨年末現在、対象となる出版点数は148点になるが、そのうち、6か月間で発行部数の5%以下しか売れてない本が、102点もある。発行部数の20%以上が売れていると優遇措置の対象外となるが、岩田書院の場合は、それが19点しかない。それだけ在庫が売れないのである。
 なのにこの春、一気に5点増刷する。売れ足が決していいわけではない。なぜか…。少しでも売れる本は継続して供給して、全体の売上げを上げたい。秋にだすと、前記の優遇措置の対象外となってしまう。5月頃にまとまった金額(出版助成金)が入ってくる(助成金は、助成金をもらった本のための資金なのだが、先に使わせてもらおう)。
 こうして「資産」ばかりが増えていく。