No.137 1999年4月
【「著者を搾取している訳ですな」】
 昨年(1998年)末、『日本古書通信』12月号に「専門書出版を続けるために」という小文を書かせてもらった。内容的には、この「裏だより」でいつも書いているようなことなので、再録は避けるが、その中で、「裏だより」についても触れて、ご希望の方はお申し込みください、と書いたところ、20人ぐらいから申込みがあった。全国紙に宣伝をして「図書目録謹呈」と書いてみても、せいぜいハガキが数枚くる程度なのに較べると格段に多い。ところが、その中に1通、以下のようなハガキがあった。
 「岩田博様 古書通信の文章、拝読。良書出版を誇らし気にお書きですが、「おかげさまで小社は印税ナシにもかかわらず、原稿だけはたくさんあります」に呆れました。著者を搾取している訳ですな。」
 この手のハガキは、必ずといっていいほど、差出人が書いてない。
 印税ナシ、とは正確な表現ではなかったが、限られた紙面で そのように書いたもの。正しくは、初版は印税相当として 発行部数の5%の本を著者に献本しているのだが…。確かに「誇らし気に」読めたかもしれない。それにしても、こいつに、岩田書院の決算書を見せてやりたい、我が家の預金通帳を見せてやりたい。それでもあんたは「著者を搾取している訳ですな」などといえるのか。こら!、名を名乗れ。
 でも、お互いの預金通帳を見せ合ったら、この人のほうが貧乏だったりして…。しかも、ひょっとして「著者」だったりして…。ハガキの消印は、東京「杉並南」である。

前の裏だより 目次 次の裏だより