No.123 1998年7月
【悪文の例】
 朝日新聞(1998年5月16日)に「混迷深まるインドネシア」と題して、次のような記事があった。
「(前略)大統領が一連の騒動に火をつけた燃料、電力価格引き上げの大統領令の見直しを表明しただけで事態を収拾できると判断しているとすれば、ルピア下落による金融危機に端を発した経済異変の中で国民の間にたまった政権への不満、不安に対する厳しい現状認識の欠如を物語るものだ。(後略)」
 私は、まず この記事を読み出して、「大統領が一連の騒動に火をつけた」のかと思ってしまった。そうではなくて、この記事は 次のように読まなければならないのだ。「大統領が」「判断しているとすれば」、それは「現状認識の欠如を物語るものだ」、と。
 このような原稿を手にした編集者としては、原稿のスタイルをなるべく尊重して、しかも意味がとりやすいようにしなければならない。私なら、次のように直す。
「一連の騒動に火をつけた燃料・電力価格引き上げの大統領令の見直しを表明しただけで、事態を収拾できると大統領が判断しているとすれば、それは、ルピア下落による金融危機に端を発した経済異変の中で、国民の間にたまった政権への不満・不安に対する、厳しい現状認識の欠如を物語るものだ。」(できれば文章を2つに分けたいところだ)
 ひとりよがりの文章を 誰が読んでも判るようにする。それが編集者の仕事でもある。

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