No.116 1998年5月
【売れた本の話し】
 この裏だよりで「7日間の記録」が8回も続き、定期講読者(?)は少々うんざりしてきたことでしょう。そこで、たまには明るい話題を…。
 以前に売れない本の話しを書いたので、今回は売れた本の話しです。昨年刊行した専門書のなかで、売れ行きがいい本が何冊かあります。

葬送と墓の民俗  97.04刊  7900円  600部製作  12ヶ月 で実売458部
近世日本の海外情報  97.05刊  6900円  500部  11ヶ月 500部
まじない習俗の文化史  97.07刊  6900円  700部 9ヶ月 569部
正一位稲荷大明神  97.10刊  4800円  600部 7ヶ月 434部
差別と穢れの宗教研究  97.12刊  6900円  600部 4ヶ月 336部

小社の本の読者は、a 図書館・研究機関、b 研究者、c それ以外の人、に大別できます。このうち a b で基本的な部数を確保するのですが、c の人たちが買ってくれるかどうかで部数がかなり違ってきます。
 b の研究者とは、いわばプロの研究者であり、研究すること、そしてその成果を教えることによって生活の糧を得ている人、またはそれを目指している人、ということができるでしょう。とすると、c それ以外の人は、いわばアマの研究者、ということになります。「研究すること」にプロとアマの違いなどはないのですが、生活の糧をどこから得ているかによって、「研究者」にはプロとアマの違いはあると言えるでしょう。
 日本史・民俗学の専門書であっても、読者が専門家だけにとどまっていては、売れないのです。それは、近世史の本が売れなくて、戦国期の本のほうが売れる、ということからも理解できます。前記の書目でわかるように、民俗学でいえば、宗教民俗関係の本のほうが売れるのです。
 c の人たちの具体的なイメージですか? それは、小社の顧客リストのうち、学会や研究会に所属していない方がたです。
     
  **その後の売れ行きをフォローしておきましょう。
葬送と墓の民俗        残部 28  
近世日本の海外情報  98年 6月  200部増刷  残部 71  
まじない習俗の文化史  98年 10月  300部増刷  残部 220  
正一位稲荷大明神        残部 28  
差別と穢れの宗教研究        残部 6 (6月増刷予定)

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