No.65 1996年11月
【出版社は生かさぬように殺さぬように】
 人文系の学問の世界は、自分の考えを論文という形で発表し、それをまとめて著書にして世に問う、ということで成立しています(近い将来は、紙に印刷しなくても、電子情報で用が足りるのかもしれませんが…)。そのためには著書をだす出版社が必要です。
 ところが、近年の出版事情の悪化で、その専門書を出版してくれるところが少なくなりました。「くれる」という表現をしましたが、著者と出版社との関係は、まさに出していただく、出してやる、という関係になっているようです。
 そういう状況であるからこそ、岩田書院の存在価値があるってもんなんですが、その岩田書院、これが儲かっていないからこそ、「よく頑張ってるな」、と応援をしてくれて、本も買ってくれるのであります。逆にこれが儲かっていたら、「著者に印税も払わないで、高い定価をつけて儲けている」ということになってしまう。でも、赤字続きで新刊を出すこともできないくらいだと、これも困る。
 というわけで、あまり儲かってもいけないし、本が出せなくなるほど赤字でもいけない。となると、売れそうもない本を出し続けられる程度に儲かっているのが、一番いい、ということになりそうです。このバランスって、非常に大事だと思います。
 その理想の実現へ向けて、明日も元気に働こう(なにやら気勢があがらないが…)。

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