No.38 1995年11月
【本をいかに安く作るか】
 商売の秘訣は、支払いをできるだけ少なくして、売上げをできるだけ増やすことである。売上げがあまり期待できないとなると、支払いを抑えることを考える。通常経費は別にして、ここでは、本の製作費についてみてみよう。
 製作費のうちで大きな比重を占めるのが「組版代」で、しかもこの部分が一番経費を抑えられる可能性がある(あとの、印刷・製本・用紙代などは、どこも同じようなもので、あまり安くならないし、少部数の出版の場合は、安くなっても金額的にたいした額にならない)。
 まず第1は、安い印刷屋さんに頼むこと。ただし、安くて、早くて、正確で、きれいでなければならない。できれば支払いも待ってくれれば最高である。
 次は、フロッピーで原稿を入れることである。これだと組版代が約2割安くなる。たったの2割?と誰しも思う。しかし現実にはそこまでしか安くしてくれない(印刷屋さんにも言い分はあるのだが、いまいち説得力に欠ける)。
 最後は、自分で印刷用の版下をつくること。これだと、あとは印刷するだけなので組版代は0になる。パソコンの編集機の性能が格段にあがって、ほぼ電算写植に対抗するくらいになってきたので、専門書の出版社でも自分のところで組んでしまうところがだいぶ増えてきた。たとえば、貴重本刊行会(国文学)・ひつじ書房(言語学)・風響社(民族学)などである。しかし、これをやると印刷屋さんに払う金額は確実に減るが、逆に社内の人件費がかかることになる。さらに時間もとられる。そのあたりのバランスを考えて、各社試行錯誤をくりかえしているのではなかろうか。
     
  私自身、自分でやったほうが早いだろうと思うが、その時間がない。他の人でもできる仕事は外に出して、自分でしかできない仕事を自分でやればいいのだが、えてして、誰にでもできるような単純作業を自分でやってしまっている。

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