No.25 1995年5月
【『フォークロア』誌の廃刊に思う】
 民俗学に関心をもっているかたは、既に御承知のことと思うが、本阿弥書店から発行されていた『フォークロア』が、95年2月に第7号をだして廃刊になった。隔月刊行だったので、ちょうど1年のいのちだった。当初から我々出版社仲間や、民俗学研究者の間では、その刊行をあやぶんでいて、いったいいつまでもつのかネ、と注目していたのだが、予想どおり廃刊になった(というよりは、予想以上によくもったというべきか)。こういう言い方をすると、一生懸命作っていた人に対して非常に失礼なことは重々わかっているのだが…。原因はいろいろ考えられる。

最初から隔月刊行(180頁・880円)というのは、重すぎる。せめて季刊でスタートして、隔月にもっていくか、64頁ぐらいの規模にして負担を軽くしておくかだ。編集スタッフの人件費だけでも大変だ。これでは赤字の時に持ちこたえられない。

初めから、雑誌の売上だけで利益を出そうとしている。これは経営の基本であるけれども、そう簡単に利益がでるわけがない。雑誌をだすことによって、自社の出版物の宣伝をして、読者・著者との関係を持続させ、それが新企画に結びつき、永い目で売上があがることを目指すような考え方にたたなければ、とてもこのような雑誌はだせないのだが。その点、本阿弥書店は民俗学系の書籍を出版していない。

読者の数の予測が間違っていたのでは。日本民俗学会の個人会員が約2000人、各地にある県単位の民俗学研究会の会員がその約10倍いるとして(サンプル調査をやってみた)2万人。これがベースになるが、この他に、いわゆる研究者以外の層をどれほど見込めるのか(どれほど見込んだのか)ということが問題だ。

もちろん、雑誌の企画(特集内容、執筆者など)の善し悪しや、営業力があるかどうか、ということも大事だろう。

 歴史系の雑誌は、月刊ででているものだけでも、歴史学研究・日本史研究・史学雑誌・日本歴史・歴史評論・月刊歴史手帖などがあるのに、民俗学系の雑誌は、日本民 俗学会の機関誌が年4回でているだけ。『フォークロア』のような雑誌があっても不 思議ではないのだが…、まだ学問がそこまでいっていないということか。
 なお、柏書房からでていた『リベルス』も18号(95.2)で廃刊になった。こちらは同じ隔月刊でも、歴史系の出版社のPR誌的な作りかたをしていた。会社の規模もかなり大きいのだが、それでもだめだった。雑誌をだすということは、むずかしい。
     
  かつて、堺屋図書から『ふぉくろあの眼』という雑誌がでましたが、これも1号だけで終わりました。

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