No.21 1995年1月
【本はでた時がお買い時、品切れになってからでは遅すぎる】
 専門書の売れ足が遅いといっても、やはり刊行後の半年が勝負です。ここで売れないと、あとはいくらたってもなかなか売れません。でも、いったん品切れになると今度は簡単には増刷できません。1年間に50冊しか売れない本は、300部増刷したら、6年たたないとなくならない、という計算がすぐできてしまい、これでは、増刷してもしかたがない(というより、しないほうがいい)ということになってしまいます。
 そこで岩田書院の具体例を…。

中世的世界から近世的世界へ  93.06  600  半年後 270  1年後 +95 = 365
東北民間信仰の研究・続  93.08    500     330     +40 = 370  
父親が娘を殺す話  93.11    600     390     +60 = 450  

 この中には、著者の買い上げや教科書採用などの特殊事情がふくまれますが、それにしても、刊行後の半年と、その後の半年とでは、実売部数が3分の1に激減します。歴史・民俗学関係の新刊だけでも、各出版社から毎月何冊もでているのですから、本がでた時に買わないと、翌月にはもう、次に買わなければならない本がでてしまいます。それに、出版社も新刊がでた時には宣伝をするけれど、そのあとはあまり宣伝もできません。そんなわけで、上記のような数字も納得できます。
 ところで、前記の『中世的世界…』『東北民間…』『父親が…』は、94年12月末現在で残り部数がそれぞれ140部、108部、117部となりました。品切れになってもたぶん増刷はしません。いまのうちにお買い上げの程を…。
     
  このように書けば品切れになるかと思ったのだが、そうは甘くはなかった。96年4月現在、まだ在庫があります。
     
  *このうち『中世的世界から近世的世界ヘ』と『父親が娘を殺す話』は品切れになりました。『東北民間信仰の研究・続』は、あと一息。

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