No.20 1995年1月
【専門書の出版だけで経営がなりたつか】
 この設問に対する答えは、我ながらむずかしい。いま言えることは、なりたたせようとしている、というところか…。ここで簡単なモデルを示してみよう。
 社員1人、年間新刊点数12点。これで1点あたり40万円の利益をあげたとして、年間所得480万円。45歳で扶養家族4人、これならまずまずというところか。
 それが、同じ社員1人で、年間新刊点数が4点しかないとして、1点40万円の利益だとすると、年収160万円となってしまい、これでは苦しい。また、新刊を年12点だしていても、社員が3人いたら、1人あたりの年収は160万円になってしまって、これもだめ、ということになります。もっとも、1点120万円の利益がでれば、1人あたり年収480万円となるのですが、そんなことはありえない(?)でしょう。
 ところで、最初のモデルは岩田書院のことなのだが、1人で年間新刊点数12点ということはクリアーしても、専門書1点あたり40万円の純利益をあげるのは、なかなかむずかしい。製作費は回収しても経費まではなかなかでてこない。また、専門書の売れ行きは遅く、仮に品切れになっても、増刷がなかなかできない。となると新刊の依存率が高くなる。増刷するのと違って、新刊を作り出すのは手間がかかる。毎月1冊の新刊を1人で出し続けるのは、かなりいそがしいのです。
 こうなってくると、あとは体力が勝負、という世界です。そうなのです、1人でやっていると、サラリーマンと違って、自分がたおれても誰も給料をだしてくれないので、先日、所得保証保険なるものに入ってしまった。
     
  新刊を年に数点しか出していない出版社があるが、そういうところは、どうやって生活しているのだろうか。
     
  *この時点の新刊点数は、年間12点、昨年は34点、約3倍になった。これだとなんとか回転するようになる。

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