No.16 1994年10月
【記念論文集は売れない?】
 還暦記念や退官記念などに、その先生のお弟子さんたちが論文集を作って献呈し、先生の学恩にむくいる、という慣習がありますが、このような形の論文集は、なかなか売れないので、出版社にきらわれています。その世話人となった方は、いくつかの出版社に足を運び頭をさげて出版をひきうけてもらい、お金を集めて、自分たちで負担する出版資金の調達に頭をなやますことになります(その前に、原稿をなかなか書かない執筆者から、原稿を集めなければなりません)。
 できあがった論文集は、個々の論文をみれば非常にいいものが集まっていても、1冊の本としてみると、いろいろなテーマにわかれたものになってしまいます。こうなると、高いお金を払って買うよりも、必要な論文だけコピーすればいい、ということになり、その結果として本は売れない、出版社がいやがる、という構図ができあがってしまいました。
その打開策として、いくつか方法が考えられてはいます。
 [書名]記念論集らしくない書名をつける。但し、各論文のテーマがどうしても広範囲にわたりますので、書名をつけるのにも苦労します。
 [編者]お祝いされるべき先生に編者になってもらい、その先生にも論文を執筆してもらう。本来(?)は、前記のように先生に献呈する論文集なのですから、○○記念会編とか、○○刊行会編というかたちにして、献呈される先生は論文を執筆しないのが普通でした。
 [資金]ほとんどの場合、出版社が資金的な条件をつけてきますので、その条件をクリアーするために、執筆者は1人何冊か買うことになり、また、出版記念会の会費に本代を組み込んだりして、どうにか資金を集めます。
 こうしてやっと本ができるのですから、コピーをして済ますというようなことをしな いで、ちゃんと本を買ってください。これは資金援助でもあるのです。
     
  予想どおりというべきか、小社でだした記念論集もあまり売れなかった。もっと発行部数をしぼるべきかもしれない。でも、しっかりと元だけは回収しています。

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