日本全国で行なわれている民間神楽祭祀のなかで、中国地方の民間神楽は、その内容・形態・歴史的展開が豊富で興味尽きない神楽である。
この中国地方の民間神楽のうち、祭祀的・芸能的要素の強い神楽を中心に調査・検討を加え、そこに、悪神・悪霊と関わる「悪神=鎮送」の神楽の伝統があることを明らかにする。
このように、中国地方の神楽では、悪神を鎮送するために、激しいテンポの奏楽で悪鬼や大蛇などを退治する舞が展開されてきた。
天蓋や白い布や藁蛇を使う「神がかる神楽」を色濃く残しているこの地の神楽は、単に古い歴史をもつだけでなく、「生と死の思想を秘めた神楽」と言えよう。
中国地方の神楽は、神楽の根源に触れる、日本神楽の原点と位置づけることができる。 |