第1部は「史料編」として、信濃国麻績宿(長野県東筑摩郡麻績村)名主の葦沢(岩淵)源右衛門が記録した日記群のなかから、もっとも興味深い、嘉永5年(1852)〜安政元年(1854)の部分を翻刻。
現代の立場で農民や庶民の日記を研究するには、民衆の生活史や村落情勢の解明に役立つ内容を備えていることが肝要であろう。そのてん「葦沢家日記」は、民衆の生活実態や村落情勢に関する記述が多く、きわめて良質な日記の一つといえる。
本日記は、名主−村役人として業務遂行上に必要なものを記録した役用日記に、家政の私的な内容を加える形で成立したと考えられる。
前述のように、本書に収録した日記は、嘉永5年〜安政元年であるが、その全体像を示す意味で、源右衛門が自ら作成した明治4年までの略見出しを、「要項」として収録した。
第2部は「論考編」として、日記翻刻の過程で得られた成果を研究論文としてまとめた。
巻頭には、編者による史料解題を収録する。
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