山地母源論2 マスの溯上を追って
【野本寛一著作集U】

野本 寛一 著
(近畿大学名誉教授/1937年生まれ)


2009年10月刊
A5判・506頁・上製本・函入
ISBN978-4-87294-579-9 C3339
14800円
「筆者があらためてマス(鱒)について述べてみたいのと思うのは、次の二つの視点にこだわっているからである。
 その一つは、「マスは山の恵みである」という視点である。サクラマスは 体長60〜70pにおよぶものもあり、サツキマスも35〜40pにおよぶ。時を定めて溯上してくるマスは、山の人びとにとっては大魚であり、大きな恵みだった。…
 第二の視点は、マスを、山地の生業複合の中に組みこんで考えてみるということだ。その生業複合も「始原生業複合」とも言うべき、始原性の強い、狩猟・採集・焼畑などの生業要素との複合に焦点をあててみたいのである。これらの要素が、渓流漁撈・河川漁撈と複合していた実態には、想像以上に豊かなものがあった。それは、山の母源性を語ってやまないものである。…
 かつてマスが溯上した河川のほとんどに多くのダムが建設され、それがマスの山海環境を断絶させてから久しい。マスとかかわった人びとの語りをこのまま篋底の反古としたならば、山の豊かさの一側面を永久に知ることができなくなると思ったからだ。」   (本書「緒言」より)

【主要目次】

序 章 マタギとマス漁―佐藤静雄翁の半生から―
   
第1章  事例編―マスを迎えた人びと―  ( )内の数字は事例数、計82例
 第1節  サクラマスを中心として
  青森(7) 岩手(10) 秋田(2) 宮城(1) 山形(12) 福島(7) 新潟(11) 長野(3) 富山(2) 石川(1) 岐阜(9) 福井(1) 兵庫(1) 鳥取(1)
 第2節 サツキマスを中心として
  岐阜(4) 和歌山(5) 徳島(4) 滋賀(1)
   
第2章 考察編―マス産卵のムラから見えるもの―
  マスの共同漁撈/
マス漁・漁具と漁法/
自然暦と生態伝承/
マスの食法/
鰭の呪力/
マス以外/
狩猟/
採集/
焼畑/
始原生業複合/
始原生業要素の変動
   
【既刊】 著作集T:山地母源論(1) 日向山峡のムラから
山地母源論(全2冊)完結


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