天保元年やかんの年
−早物語の民俗学−

武田 正 著
(山形短期大学教授/1930年生まれ)

2005年6月刊
四六判・219頁・並製本・カバー装

ISBN4-87294-386-4
2800円

 「早物語――琵琶法師の語りの合間に、その弟子などが早口に語ったもの。「……の物語」の句で終わるから、ただ「物語」と呼ぶ地方もある。また「てんぽ物語」「てんぽう語り」「ちょぶきり」などというのも同じもので、暗記と口豆を競うものである。」
(柳田國男監修『日本昔話名彙』昭和23年 より)

早物語そのものは、奈良興福寺の座頭が平家語りなどと共に語ったことが『経覚私要鈔』に見え、すでに室町時代中頃には姿を現していた。
早物語の成立は「平家語り」の練習の中で始まったという。早口言葉そのものを考えると、あえて「平家語り」に限定する必要はなさそうだが、それはそれとして、早物語が「平家語り」と共にひろがったことは事実であろう。
山形庄内地方で、いまも豊かに語り伝えられている早物語を、全国的な視野に立って研究する必要がある。
本書は、早物語を持ち歩いた座頭・祭文かたり・越後瞽女などにも目を配り、早物語のその後の展開を、日本文学史の中に、さらに口承文芸史の中に位置づけることを目指した。

【主要目次】
早物語の時代
てんぽ物語考
昔話・わらべうたと早物語
奥浄瑠璃と早物語
狂言・昔話と早物語
ことば遊びの早物語
「はいはい物語」のわらべうた
『人倫訓蒙図彙』にみえる〈芸〉
義経伝説への道
昔話・わらべうたと早物語 再論

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