愛知大学綜合郷土研究所研究叢書P
近世東三河の水産物流通

伊村 吉秀著
(愛知大学非常勤講師/1941年生まれ)


2004年3月刊 
ISBN4-87294-318-X
A5判・318頁・上製本・函入

5900円
「三州渥美郡吉田宿(豊橋市)の魚町が、吉田24町のうちで最大の戸数を擁する町であり続けたのは、城下以外に大きな魚荷の販路を持っていたからである。地先海面を持たない内陸部や山間部、さらに信州の伊那地方の人々が、その主な顧客であった。これらの地域と吉田の魚市や新城荷問屋の間で、魚荷を駄送するために活躍したのが、信州中馬と三州の馬稼ぎであった。」(本書より)
本書は、吉田宿の魚問屋・中買と、渥美郡牟呂村・宝飯郡前芝村の村民との、魚の直売り(魚売歩行)をめぐる争論(出入り)や、中馬・三州の馬稼ぎとの間におきた、肴荷物の先着順・直出しをめぐる争論などをとおして、肴荷物の流通にとって、鮮度確保が欠かせない要因であったことを明らかにする。
【主要目次】
第一章 魚市の開設と伊奈忠次証文写
吉田方権現/安海大権現/善元の寄進状/魚出入
第二章 宝飯郡前芝村『魚出入記録』をめぐって
魚売歩行/十月の内熟/海面入会運上/指笠町と下り町の魚問屋
第三章 牛浜十三里の魚荷の流通と吉田の魚市
農間余業の海かせぎ/中馬と三州の馬稼ぎ/捌くり浜と請負浜/浜手代/干鰯・魚代・盆鯖・田作鰯/吉田への肴送りの馬道
第四章 渥美郡吉田宿魚市の肴荷物と馬稼ぎ
武節・津具并こほれ馬/伊那街道と鎌倉往還/吉田宿魚問屋
第五章 伊那街道の中馬・三州馬と文政三年裁許
三州馬稼仲間と肴荷物/文政三年八月の幕府裁許/田口町村外五カ村の三州馬への復帰/訴訟費用/新城陸揚げ商人送状付地荷物
第六章 田口町村外五カ村の天保二年三州馬復帰訴訟と商品流通
杉本彦十/残った紛争の火種/田口町村外五カ村による懐柔策/評定所一座の変節
 
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