天平期の僧侶と天皇
―僧 道鏡 試論―

根本 誠二著
(筑波大学教授/1949年生まれ)

2003年10月刊 ISBN4-87294-293-0
四六判・198頁・並製本・カバー装 
2000円
品切れ
天平時代の後半をエネルギッシュに生き抜いた僧道鏡(?-772)は、…天皇の位を切望した「悪僧」として描かれる事が多い。…道鏡は、政治的にも文化的にも、日本の古代社会に転機をもたらした稀代の僧侶であったということを、もう少し真正面から論ずる必要があると思う。私は、本書で単に判官贔屓で道鏡を再評価しようというのではない。…続日本紀をはじめとする史料群を丹念に読み繙いてみると、道鏡が女帝称徳(孝謙)天皇と信仰的な「交歓」の機に浴した様子がうかがえ、語り尽くせない何事かがあったことがわかる。…私は、本書で道鏡の一生を真正面から語ることによって、古代社会にあって奈良仏教者が、先進文化としての仏教を体現し、うちに秘めた高度な文明人であるとの自負心を持った仏教者が権力者に対峙しつつも、結局は、吸い寄せられ、そして、一旦、都合が悪くなると指で弾かれたかのように急転直下、仏教者が「寧楽」から遠ざけられていく様子を淡々と描きたかった。…以上のように、歴史家として「寧楽」の僧道鏡を研究するということは、単に宗教史・政治史的な意義にとどまる事なく、日本人の信仰観への問いかけを行うという、重要なテーマを内包するということである。… (本書より)
【主要目次】
第1章 道鏡の時代(唐代仏教のうねり/学僧道鏡の出現/道鏡の師/行基と道鏡)
第2章 女帝と道鏡(道鏡の学識/武后と称徳天皇/奈良仏教の密教化)
第3章 高僧と天皇(毘沙門天と吉祥天/道鏡と弓削氏/法王道鏡)
第4章 仏法の王と八幡神(八幡神託/仏舎利出現/清麻呂の罪)
第5章 仏教政治の本質(称徳天皇のゆらぎ/称徳天皇と吉備真備/真備と藤原氏)
第6章 肥大する道鏡像(道鏡の失脚/奈良仏教と藤原氏/道鏡と『霊異記』)
第7章 道鏡に対峙する(道鏡への同情/道鏡と奈良仏教/奈良仏教の命脈)
引用史料・参考文献一覧
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