No.964(2016.06)

【学位論文公開】

文部科学省の「学位規則の一部を改正する省令の施行について」http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/daigakuin/detail/1331790.htm に基づいて、各大学とも、学位論文をインターネット上で公開するようになった。これが、出版社に与える影響である。学位授与と出版刊行には2つのタイプがある。学位を授与された論文を出版する場合と、逆に、出版された本で学位を授与される場合である。
 前者の場合は、学位論文を基本にしながらも、その後の成果をとりいれ、編集者の意見も参考にしながら、研究書として、より完成された形で出版する。したがって、研究者がその業績を引用する場合は、ネット上で公開されている博論ではなく、出版された本から引用するので、出版社には、あまり影響がない、とも言える。
 しかし後者の場合は、出版された本とまるっきり同じ内容が、同じ体裁でネット上で公開される。これって、問題だろう。もちろん学位授与後3年程度は公開を保留できることにはなっている。しかし本を売る側の商業倫理として、「1万円近い定価を付けて売ってる本と同じものが、ネット上で無料で公開されてますよ、それでもいいですね」と確認してから売らないと、詐欺行為になってしまうんじゃないのか。そういうレベルの問題だろう。
 大学によっては、出版公開された学位論文はネット上で公開しなくてもいい、という判断をしている。基本は、学位論文は公開すべし、でも出版公開できないならネット上で公開しろ、ということだろう。違うのか?。