No.939(2015.12)

【ひとり出版社ということ】

 西山雅子『“ひとり出版社”という働き方』(河出書房新社 2015)という本が出たり、以前、岩田書院も採り上げられた「小さな出版社のおもしろい本」というムックの続編が出たりして、小さな出版社が注目されているようだ。
 たしかに、以前に比べると起業しやすくなっているとも言える。岩田書院の創立時期は、まだ組版を自分でやるところはほとんどなかったが、いまは自分のパソコンで印刷用の組版データを作るのが当たり前になっている。そうしないと、ひとり出版社は成り立たないだろう。組版を印刷所に出していたら、その経費がかかる。それを自分でやれば、あとは紙代・印刷製本代くらいなものである。
 岩田書院の場合は、組版は印刷所に頼むし、編集作業や、在庫管理・発送作業も外部に委託するし、決算は税理事務所に頼むし、自分でも、何をしてるんだろうか、と思う時もある。ひとりと言っても、ひとりでは何も出来ない。ただ言えるのは、すべて私の指示がないと動かない、ということ。そうか、「ひとり出版社」の定義は、そこか。