No.726(2011.12)

【研究者人口1県1桁?】

 手元に、日本民俗学会と地方史研究協議会の会員名簿がある。県別の会員数が1桁なのは、日本民俗学会(2010年現在)では、福井・徳島・高知・佐賀・宮崎の5県、地方史研究協議会(2006年現在)では、前記の県に加えて、岩手・秋田・山形・岐阜・鳥取・島根・山口・香川・長崎・熊本・大分・鹿児島・沖縄の18県である。
 5県と18県の違いは、会員数の違いによるのか(会員数は各ウェブサイトによると、民俗学会2300名、地方史1600名)、他に全国学会があるかないか(民俗系の全国学会は日本民俗学会しかないのに対して、日本史系の全国学会は他にいくつもある)によるのかも知れないが、民俗学会のほうが、より地域に密着していると言えるのかも知れない。
 それはともかく、この状況は、これらの県で地域史研究を支えているのが、大学の先生か、博物館の学芸員しかいない、ということを示しているのだろう。かつて郷土史研究を支えていたのは、高校の社会科の先生たちであった。この先生たちは、自分でも研究していたが、郷土クラブなどをつくって、子供たち(生徒たち)も引き込んで一緒になって勉強していた。
 勉強する楽しさ、研究する楽しさを教えられるのは、教師みずからがそれを楽しんでいなければできないだろう。しかしいまの教育の現場では、それは許されないらしい。研究する暇があったら、教育しろ、ということだ。
 学校教育を離れても同じことが言える。ある地域のことを調べようとして、教育委員会に問いあわせると、かつては、この人のところへ行け、という人がいた。ところが今は、そういう人がいない。人を育てるのは、人だろう。その人が、いなくなっている。これだから本が売れない。