No.702(2011.08)

【かせぎまくってる?】

 この春、私、同業者から「岩田さん、稼ぎまくってるねえ」と言われた。それも二人から。私、こういう言われ方をされるとムッとくる。私は、岩田書院の実情がみんなにも判るように、かなりの程度、情報を公開してるつもりです(今年は 震災義捐金として学会売上げの1割を寄付することにしたため、その根拠となる売上金まで公開してる)。
 業界の事情が判っているような人から、うらやましがられる?ような状態ではないはずだ。やれるもんなら、やってみれば…。売上げが上がらないと判っていても、毎週、手分けして学会に販売にいって、経費がでるかどうか。
 関西に行くときは、前の晩に事務所で仮眠して、5時前の初電に乗ってお出かけ。会場では販売しながら校正をし、ホテルでもゲラを広げ、それを現地から宅急便で印刷所に送り、翌日は次の研究会にでて、懇親会を終えて、東京の事務所に戻るのが夜の12時過ぎ。こんなことをして、売上げが10万円くらいです。還暦を過ぎた私が、これを続けるわけですよ。
 売上げが上がらないと、困るんですよ。新刊点数だって、半年で35点です。制作費だって半端じゃない。そういうことをしているのを見て(見てるのか、本当に?)、「稼ぎまくってる」と、どうして言えるんだよ。
 そりゃ、こちらは商売だから、儲けようと思ってますよ。なにも文化事業をしようなんて思ってません。ただ、儲けるためには、いい本をしっかり作って、確実に売っていくことしかない、と思ってるだけなんです。儲けようとしたって、そう簡単に儲かるもんじゃない。ひたすら本を作り続けること、私にできることは、それしかないから。
 言ったほうは軽い冗談のつもりだろうが、私にとっては「この私に向かって言うか?」と、ついムキになってなってしまう。まだまだ若い?(苦笑)。