No.651 (2010.10)

【読者・著者の 信頼と支持と共感と】

 我々の業界は狭い。同じ人文系の出版でも、ちょっと分野がずれると、岩田書院?、という反応になる。この狭い世界は、著者・出版社・読者が一体になった村社会のようなものである(ということは以前にも書いた)。この世界で生きていくためには、読者・著者の信頼と支持と共感とを得られるかどうかが重要である。
 出す本の内容が第一だが、それ以外に、校正・装丁などの本づくりがしっかりしているか、販売努力をしているか、定価が高すぎないか。これらのことを読者・著者は、よ〜く見ている。だから、それに応えられるかどうかが、出版社に問われているのだと思う。校正が甘くて、装丁も良くなくて、宣伝もしなくて、定価も高かったら、著者・読者からそっぽを向かれて、新しい企画も出てこなくなる。
 でも、そうせざるを得なかったら(たとえば、定価を高くせざるを得なかったら)、そのことを説明しようよ。そうすれば共感を得られるかもしれない。そうすれば支持してくれるかもしれない。だから私は、できるだけ正直に伝えようとしている。判ってほしいのですよ。私がやってることを…。判らない人は判ってくれなくていい。そういう人は、相手にしないから。判ってくれる人を大切にしたい。
 でも、今年の新刊点数は異常を通り越している。10月前半までで既に60点。年内あと2か月半で確実に15点は出る。年間75点!?。じつは2005年に年間66点という記録があるのだが、それを超えた。こんなことをしていると、どこかにしわ寄せが来る。私の体に来るか、本の出来(内容)に来るか…。こんなことをしていると、読者・著者の信頼を裏切ることになるかもしれない。それは避けたい。どうする。まずは仕事を減らすか…。
 と言ってるさきから、企画の打診があった。う〜ん。声がかかるうちが「はな」なのかもしれない。それにしても、だ…。