No.638 (2010.8)

【売れると思ってる?】

 出版社の社長の発言としては如何なものか、という気がしますが、言ってしまおう。
 ここのところ「記念論集」を何冊か作っていますが、売れません。先生の古稀や退職を記念して、教え子たちが、お世話になった先生に献呈する論文集のことです。こういった習慣は、いつ頃からできたんだろうか。以前にも書いたと思いますが、「先生のお蔭で、こういった論文を書けるまでになりました、ありがとうございました」といって先生に献呈するのが基本型。したがって編者は「○○先生○○記念論集刊行会」が本来の形ですが、それだと売れないので、出版社側の要望で、お祝いされるべき先生を編者にして刊行する場合が多くなってきています。
 刊行の趣旨がそうだから、集まった論文のテーマは、いろいろ。書名をつけるのに苦労します。「〜の諸問題」「〜の新展開」「〜の視座」「〜論叢」などなど。でも、考えたところで、内容が変わるわけではない。
 ここで、当の執筆者に問いたい、貴方はこの本を買いたいと思いますか?、と。これって、とっても大事なことだと思うのですよ。自分が買いたいと思わない本が、売れるわけないですよね。でも、そういう本を出したいのなら、それを売るところまで責任を感じてほしいわけですよ。出版すると決めたのは私(岩田書院)なんだから、売れない責任を「とる」のは私で、これは仕方のないことです(すみません、言い換えます。「仕方がない」ではなくて、「当然です」というべきなんでしょうね…。でも 気持ちとしては「仕方がない」)。
(この項、次に続く)