No.610 (2010.4)

【両極分解】

 またまた吉川弘文館ネタです。吉川さん、すみません。
 最近の吉川弘文館の定価設定をみていると、安いか高いか、両極分解しているように見えます。安い本は、一般の歴史好きの読者にも買ってもらえるように、上限を3000円以内に抑えた本。「史跡で読む 日本の歴史」2940円、「日本中世の歴史」2730円、「現代語訳吾妻鏡」2100円〜、「人物叢書」1890円、「歴史文化ライブラリー」1785円〜、などなど。
 それに対して、高い本は1万円近い定価設定にしている。その中間の定価帯の本が少ない。逆にいうと、いままで300頁台の専門書を7000円〜8000円の定価にしていたのが、1万円になってしまった、ということでしょう。岩田書院の価格帯は、まだこの中間レベルを維持してます(しようとしてます)。
 岩田書院としては、定価の安い本は、原価を回収するまでに時間がかかって、回収したあとも利幅が少ないので、できれば避けたいのです。定価の高い専門書だけ作って、それがしっかり売れていれば、経営的には一番「らく」です。でも、それがかなわぬ夢?ならば、専門書を買ってくれる人たちを増やす努力から、始めなければならないでしょう。
 でも、これって、岩田書院の規模でやろうとすると、疲れるんです。だから、吉川弘文館には、頑張って、読者開拓に励んでほしいのです。岩田書院は、その後についていきますから。
 そういえば、いまはもう出版活動をやめてしまった高科書店の高科さんが、かつて言ってました。岩波書店のロゴがミレーの「種を撒く人」なら、自分のとこは同じミレーの「落ち穂拾い」だと…。