No.506(2008.4)

【製作原価の公開A

 前回の続きです。これに、宣伝費・賃借料・発送費などが入って、我が家の生活費もださなければならない。さしあたり年間の広告宣伝費(1700万円)だけを、製作原価に反映させてみよう。昨年の新刊点数は47点なので、1冊あたり361,702円(B)となる。
 合計A+B=1,376,602円
 定価を7900円とすると、取次店への卸正味が67%なので、卸価格は5293円(C)。
 まず最低限、A÷C=192部の売上げがないと、原価回収さえできない。
 次に、(A+B)÷C=260部売れて 宣伝費まで回収、これでも倉庫代や発送費が回収できていない。現実には 250部も売れない。在庫数は、岩田書院のウェブサイトで毎月公開しているので、見て欲しい。ちなみに、昨年までの作り部数は平均500部である。
 これでは、我が家の生活費まで稼げていないのは明らかである。岩田書院は私(岩田)ひとりで、このありさまである。社員を雇っている出版社は、どうやっているのだろうか。人様のことを心配している場合ではないのだが…。
 ちなみに、自分でパソコンで組版して、最終データを印刷所に渡し、自分で原稿整理や校正もすれば、外部に払う経費は大幅に削減できる。前記のモデルだと 1,2,3,10,11(合計61,7900円)がナシになるので、半額以下でできることになる。そのかわり それをするための時間が、ひたすら必要になる。
 320頁の本で 定価7900円+税という高い定価をつけて、なおかつこの原価率・利益率である。1頁あたり25円の定価である。国文系の専門書の定価はすでに頁30円以上、日本史でもそうなってきた。吉川弘文館の価格をみるとよく判る。こうやっても、出版社は経営がきびしいのですよ。