No.120 1998年5月
【図書目録ができました】
 岩田書院の新しい図書目録ができました。この新刊ニュースを毎号お送りしている方には、お送りしましたが、御希望の方は御連絡ください。無料です。
 旧版は96年5月につくっているので、新版をだすまで2年かかったことになります。旧版は、新刊点数が50点になったのを機につくりました。今回の新版は 新刊100点達成を機につくろうと準備したのですが、もたもたしているうちに、結局 新刊108点になったところでつくったことになりました。
 「百物語」のように、グチを100回いい続ければ何かでてくるかもしれないと思ったのですが、何もでてこないうちに108になりました。ちょうど煩悩の数になったところで、一区切り、です。
 なお前回は、裏だよりを別冊にしましたが、今回は合冊にしてあります。また、この新刊ニュースを捨てずにとっておいてくださる方が結構いるようですので、保存用の簡単な表紙をつくりました。御利用ください。
 それにしても、200頁弱の図書目録は、ちょっと贅沢です。しかし岩田書院の場合は、いってみれば通信販売のようなものですから、カタログにお金をかけるのは、仕方がないのかもしれません。
     
  **もちろん、ここに言う図書目録は、前回の98年版のことです。
 ところで、この図書目録ができたときに、神戸新聞・千葉日報をはじめ地方紙の何紙かに、次のような紹介記事がでました。読書欄の「出版コラム」という欄で、執筆者は、ジュンク堂書店の仕入責任者である中村文孝さんです。少し長いですが、再録させてもらいます。
       
 
 
 
 「志」感じる出版社 東京・世田谷の岩田書院 面白い「出版目録」刊行
 東京・世田谷に歴史民俗関係の学術書を中心に刊行している岩田書院という出版社があります。先日、1998年版の出版目録が届き、面白く読ませてもらいました。
 変な言い方かもしれませんが、まさに「読んだ」のです。図書目録には、書名、価格などの必要項目と若干の解説がある程度が普通ですが、この目録は、新刊1冊ごとに出される「新刊ニュース」をそのまま目録に収録しているため、刊行される本の内容説明と主要目次をも掲載しているのです。1点ごとに、出版するぞという「志」が感じられて、大変気持ちがいい出版社です。
 岩田書院はこの6月で創業5年になり、これまでに100点以上を出版しています。その間の紆余曲折を、新刊ニュースに「裏だより」と題して紹介しています。ここでは、毎年の収支決算や原価の公開のほか、出版にまつわるエピソードを語っており、現在の出版界が抱える諸問題を提示しています。
 西では京都・吉田神楽岡町に美術・建築関係の本を中心にした昭和堂があります。刊行されているのは売れない分野の本ばかりで、頭の下がる思いを持ち続けています。
 これまでは地方の出版社に“出版の志”が感じられました。しかし一部では少々息切れを起こしつつあるようにも見えます。「志」と「経営」を両立させることをきちんと念頭に置いていたのか疑問が残るところです。
 今や死語となった「志」という言葉を忘れずにいる出版社を目にすると、日々、本に携わりながら見失いそうになる大切なものを、辛うじて取り戻すことができるような気がします。現在、出版されている多くの本は、どうでもいいようなもの(?)ですが、志を持った出版社のわずかな“光明”を絶やさないために膨大な出版物が刊行されているとするなら、それも致し方ないのかもしれません。
      (神戸新聞 1998.6.28)

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