No.12 1994年1月
【印税の話】
 普通、著者には印税(著作権使用料)が支払われます。世間一般(?)では10%という話を聞きますが、学術専門書の世界では、とんとそんな話は聞きません。印税どころか、何部買上げが条件とか、製作費全額負担とか言って、ほとんど自費出版に近い形まで、いろいろあります。
 ちなみに、前回の“新刊ニュースの裏だより”で書いた文部省の出版助成金を受ける場合は、印税ナシ、ということが条件となります。
 岩田書院の場合は、原則として、発行部数の5%相当の献本、という条件で御了解いただいています。700部発行の場合は、700部×5%=35冊、ということになります。初めて本を出される著者の場合は、それまでお世話になった方々に本を差し上げることが多いので、この献本部数以上の本を必要とされる方が多く、その際は、その分だけお買上げいただくことになります。買上げ価格は、いわゆる8掛け(定価×0.8)という割引価格になります。
 要するに考え方としては、「印税は払えません、でも著者の資金負担をできるだけ少なくします、そのかわり、たくさん売ってください」というものです。
 なお小社の場合は、増刷にあたっては、5%相当の印税をお支払いすることになっています。ただし売れ高払い方式です。この方式は、本の製作部数に応じて印税を支払うのではなくて、実売部数に応じて毎年精算してゆくもので、出版社にとっては負担が少なくなるので、この方式がふえてきているようです。
     
  こんな条件でも納得していただけるのは、著者が生活の糧を別のところから得ているからです。著者が20年、30年とかけて研究してきた成果に対して一銭も払わないで、ちょっとアルバイトを頼んだら、それにたいしてはバイト代を払うというのも、おかしなもんですが。

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