8人の学芸員著『博物館の仕事』
評者:鎮目良文
「地方史研究」335(2008.10)

 本書は、神奈川県博物館協会創立五十周年を記念して刊行された『学芸員の仕事』(二〇〇五年四月刊、岩田書院)の企画・編集を担当した学芸員たちが中心となって執筆したもので、自らが働いている博物館での仕事や活動について、日頃から考えていることを発信したものである。人文系から自然系まで、それぞれ、さまざまな専門をもつ学芸員が、どんな仕事をし、何を考え、現場でどんな模索をしているかを具体的な事例に基づいて、率直に述べた内容となっている。

目 次
はじめに−この本ができるまで−
T 学芸員の仕事
 江の島に見る身近な自然−江の島の海岸の生き物事情−
 博物館資料としての考古資料
 特別展「今に伝えるつむぎの魅力」を開催して
U 地域とのかかわり
 地域博物館における市民による調査の実際
   −民俗講座「道祖神を調べる会」の活動から−
 特別展「里に降りた星たち」と「星まつりを調べる会」
 地域博物館とは何だろう−博物館における展示の視点から−
V 現代社会と博物館
 天守閣という名の資料館
 指定管理者制度の導入と横浜開港資料館
後 記

 現在、博物館をめぐる状況が厳しくなる中、学芸員の在り方や専門性についての議論が起こっている。こうした議論に欠けがちな学芸員の実態や幅広い仕事について、現場にいる人たちが情報発信していくことは大変重要であろう。特に、自分の“専門”に引きつけた博物館での調査研究に関することに加え、地域社会や来館者との関わりの中で生まれた仕事についても触れていることは大変興味探い。博物館学の概説書とはひと味違った学芸員の姿をみせてくれている本書は、これから学芸員をめざす人はもちろん、今後の博物館の在り方について模索されている方、そして何より「学芸員って何?」と思われている方に一読をお勧めしたい。



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