山口博著『戦国大名北条氏文書の研究』 | |||||
評者:平野明夫 | |||||
「地方史研究」335(2008.10) | |||||
本書は、小田原市史に長年携わられた山口博氏の論文集である。二部七章に、補論一編・付編三編が付されている。その構成は、以下の通りである(カツコ内は初出年)。 序 章(新稿) 「T 印判使用をめぐる問題」は、従来、充分な機構的・制度的な分析がなされず、実態が不明瞭なままに、いわば既定の事実として説かれてきた隠居後の氏康・氏政の政務への関与について、印判使用から具体的に検討した論稿(第一章〜第三章)と、北条氏一族衆のひとり幻庵宗哲の政治動向を印判使用から分析した論稿(第四章・補論)からなる。隠居の権力行使という問題は、戦国大名権力を考える際に重要な要素であり、本書は、その基礎となるものである。 山口氏の研究成果は、年欠文書の年代推定に利用されるなど、すでに北条氏関係の文書の検討には不可欠となっている。それらの論稿がまとめられた本書によって、北条氏文書の理解が格段に深まったといえる。北条氏関係の文書を検討する際に、基礎となる書である。
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