松崎憲三編『諏訪系神社の御柱祭−式年祭の歴史民俗学的研究−』
評者:樫村賢二
掲載誌:「日本民俗学」253(2008.2)



 本書は成城大学民俗学研究所のプロジェクト研究「式年祭の歴史民俗学的研究−諏訪系神社の御柱祭を中心に−」の成果である。「一定の年を決めて執行する定例の重要な祭儀を式年祭」とし、その式年祭である七年目ごと(満六年)の寅と申年に行われる諏訪大社上社・下社(これらを大宮と称する)の御柱祭、諏訪地方の関連神社(摂社・末社)や地域社会の氏神(これらを小宮と称する)など、「諏訪系神社における祭の調査・研究を行い、その地域的展開を明らかにすると共に、それぞれの歴史的変遷をトレースし、御柱祭のもつ民俗宗教的意味の解読と、文化的・社会的意味とその変容の解明に努めたもの」という(まえがき)。
 第一部「大宮・小宮」に
 「『式年』という『時の刻み』」(山田直巳)
 「近年の御柱祭にみる不変と可変」(島田潔)
 「木に鎌を打つ信仰」(小林純子)
 「御柱祭の地域性と重層性」(牧野眞一)
 「小宮と祝神の御柱祭」(金野啓史)
 第二部「長野県内および隣接地域の御柱祭」に
 「生島足島神社の御柱祭に閲する歴史的考察」(森田晃一)
 「生島足島神社の御柱祭」(越川次郎)
 「近代都市における御柱祭」(福原敏男)
 「長野県隣接地域の諏訪信仰と御柱祭」(松崎憲三)
 第三部「御柱祭の周辺」に
 「正月に立てる『御柱』」(宇野田綾子)
 「『年祭』と蛇」(湯川洋司)
 「式年浜下りの周期性をめぐって」(小島孝夫)
が収録されている。
 式年祭において、伊勢神宮の式年遷宮と共に多くの人の関心を集めるのが諏訪大社の御柱祭であろう。諏訪の大宮、小宮の御柱祭は、式年祭の意味を総体的に考えようとする際、避けては通れないものであり、大宮のみならず多くの小宮にも視野を広めた本書は、式年祭研究、そして民俗学にとっても重要な資料と今後の研究に対する示唆を与えるものとして意義深く、式年研究、諏訪系神社の御柱祭を中心とした信仰を考えるのに必読の書であろう。しかしながら、当初のプロジェクト名と本書名と正題と副題が入れ替わってしまったように、個々の研究成果が式年祭というスポットに集中されなく、多方向に広がってしまった感があるのが残念である。しかし、まず式年祭である御柱祭を知るための足固めがされたとして、今後の継続される研究に注目し、再検討するためにも本書は研究者の傍らに置かれるべき書である。




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