磯沼重治編『菅江真澄研究の軌跡』
評者・稲雄次 掲載誌・日本民俗学No221(2000.2)


菅江真澄(一七五四〜一八二九)は自然・民俗・歴史・地誌・考古・文学などの紀行記録家である。本名は白井英二で、三河国に生まれた。後に秀雄と名乗り、菅江真澄と改名したのは秋田藩領に入ってからである。天明三(一七八三)年に故郷を出発し、現在の長野・新潟・山形・秋田・青森・岩手・宮城・北海道の各地を巡遊した。真澄自身の見聞や体験、観察などは日記・地誌・写生帳・随筆にまとめられている。その観察物としての実証的態度や姿勢は現在まで影響を与え続けている。
本書は菅江真澄の研究史である。菅江真澄の入門書は数々あるが学史的研究は少ない。入門書は柳田國男翁の『菅江真澄』と内田武志氏の『菅江真澄の旅と日記』がその代表的なものである。菅江真澄の研究は、内田武志・宮本常一編の『菅江真澄全集』を基本書として探求されているが、不明な部分が多い。その為に真澄研究は伝記的なものに終始する傾向になった。本来の真澄研究は真澄の観察記録の方法とその分析、記述内容の検討や他の同時代記録文書との比較などが要求されるであろう。そこで今日まで積み重ねられてきた多くの研究成果を研究史として構築したものが本書である。おおいに活用すべきである。
本書の内容は以下の通りである。(収録論文名・執筆者名、省略)

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