書誌紹介:『土田賢媼の昔語り』−口から耳へ・耳から口へ−
掲載誌:『やまがた民話』14(2005.5)
紹介者:(無署名)

 民話と文学の会の杉浦邦子さんの本書は、平成元年から、真室川町の語り手土田賢さんの昔語りに感動して、それから真室川通いが始まったという。真室川町出身の野村敬子さんは、日本の昔話研究の第一人者野村純一氏の夫人であり、自身研究者として大きなお仕事をなさっているが、野村敬子さんの紹介で名語り手、新田小太郎さん(平成十四年逝去)を知り、そして土田媼を知る。
 土田媼は、山形県の昔話収集の最初の方でもあり、日本民俗学を創始された柳田国男の求めに応じて、日本で最初の昔話研究の月刊誌でもあった『昔話研究』に寄稿された鮭延瑞鳳氏を叔父とする方であった。その語りのリズム、杉浦さんの求めに応じて、知っている昔話を洗いざらい語ってくれた上に、昔話の語りが土田媼の人生をどれほど豊かなものにしてくれたか、どういう形で昔話語りがなされ、どんな意味があり、どう日常生活を支えてくれたかまでを細部にわたりまとめた、昔話集であると同時に、すばらしい研究書になっている点で、今まで書かれたことのないユニークな著作になっている。一読をおすすめしたい。

 
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