山崎 祐子著『明治・大正商家の暮らし』
評者・小川 直之・掲載誌 民具研究 120(99.10)


福島県いわき市平にあった塩屋呉服店の暮らしを、山崎サト(1901〜1933)からの聞き書きを中心にしてまとめたものである。山崎サトは、著者の祖母である。
「サトの語る年中行事」「キンの金銭出納簿」「定治郎の商売」の三部構成で、「サトの語る年中行事」は、話者の語り口調が活かされている。ここでは、商家=呉服屋の年中行事の特色が活き活きと叙述されている。「キンの金銭出納簿」では、サトの祖母がつけた昭和4・5・6年の出納簿が紹介されるとともに、分析が行われている。さまざまなものの値段などがわかり、民具研究の資料としても有益である。「定治郎の商売」では、塩屋呉服店の商売のあり方、明治37年の店則、明治35年の手当給与などが、翻刻されている。さらに巻末には資料として、昭和4〜6年の「衣食住に関する家計」が収録されている。
「外食・店屋物」「食品」「衣、食に関するもの」に分けて整理しており、当時の商家の暮らしぶりが窺える。全体として叙述は活き活きとしてわかりやすいし、民具研究や民俗学では、商家・商業の研究は少なく、裨益するところが大きい。
詳細へ 注文へ 戻る