新刊紹介:飯倉義之    『口承文芸研究』28(2005.3)
武田 正著『昔話の発見 続 −昔話のフォークロア−』

 昔話のすばらしい語り手は、数少ない。しかし昔話の聞き手、それも卓越した聴き手となると、語り手以上に稀少である。
 著者は昔話研究史上において指折りの聴き手といってよいだろう。本書はその著者が自ら聞き歩いた昔話を基にして「昔話世界の構造の内容」を整序した「武田昔話学」の入門書であり、現段階での集成でもあるだろう。
 本書は先に発表された論考を土台としつつ、特に観光民話やストーリーテリングを志す「新しい」語り手たちを意識して再編されている。いわゆる「伝承の語り」を追いかけてきた学究の徒が「新しい語り」を志す人たちに何を手渡すことができるのか、という課題に対する、一つの回答でもある。
 何人ものすばらしい語り手と出会い、人生をかけて昔話を聴いてきた著者から手渡される「昔話の中にある<現代を生きて行く力>」。本書の言葉を用いるなら、それはまさしく「魂の伝承」といえるであろう。
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