保坂 達雄著『神と巫女の古代伝承論』
評者:小池 淳一
掲載誌:口承文芸研究27(2004.3)


 南島の神話とシヤーマニズム、巫女と古代王権、神の誕生・罪の始源、神楽と再生、折口学の成立、折口名彙の生成の六部に分けられた、著者の一九七七年からの歩みを一冊にまとめた論文集成。折口学から流れ出た学統の重厚な結実の一つと受け止めることができるだろう。折口名彙の丁寧な解読を基底にして、古代(文学)における神の追求という本質的な課題に取り組んでいる。古代の言語や表現を胸中に反復しながら現代の祭儀や芸能を通して主題に迫る方法はもっと論義を呼んでいいはずで、著者を孤高の人にしてはいけないだろう。巻末に研究者・引用資料・語句事項の三種の索引と被引用文献一覧を付しているのも周到な本づくりとして見逃してはならない美点であろう。折口信夫関連の第五部と第六部とを独立させて一冊にしてもよかったのではないか、と思わせる盛りだくさんな内容の書物である。


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