園田学園女子大学歴史民俗学会編『「鏡」がうつしだす世界』
掲載誌:古代文化56-2(2004.2)


 本書は、園田学園女子大において開催された公開学術セミナーにおけるシンポジウムでの報告をまとめたものである。そのコンセプトは、歴史と民俗を並列し、現在ある身近な生活文化への視点を定め、過去の人々が残した史料から歴史認識を模索することにあるという。今回は鏡を切り口として、その映し出す世界を多角的に解明しようとする試みである。

本書の内容は、大きく歴史編と民俗編の「鏡と王権」「鏡と民族」の二部に分かれる。前者には泉森皎『古墳に鏡を副葬する意味』、勝部明生『鏡の用途』、大江篤『神体としての「鏡」―伊勢神宮を中心としてー』、後者には赤井孝史『氷見の村と鏡磨』、小松和彦『鏡と信仰』がそれぞれ収められる。そして「あとがき」においてシンポジウムの司会を務められた大江篤氏がまとめを行われている。鏡というと、反射的に姿を写す面の失われた発掘品を思い浮かべてしまう。しかし、当然のことながら、鏡は現代においても生活必需品である。改めて鏡の存在を広く認知するためには格好の一冊といえよう。


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