そのだ歴史民俗ブックレット@
「鏡」が うつしだす世界
―歴史と民俗の間―


園田学園女子大学歴史民俗学会編

2003年10月刊行・A5判・94頁・並製本
ISBN4-87294-296-5
1200円 品切れ
「鏡」は、化粧をはじめ顔や姿をうつす生活用具として使用される一方、そこにうつしだされる世界の神秘さから、信仰の用具としても使用されてきた。この「鏡」の二面性のそれぞれに焦点をあて、人々が「鏡」をどのようにして作り、磨き、使用したのか、また、「鏡」に何を映し、そのうつしだされた像から何を考え、どのような世界を感じたのかを、考古資料・文献資料・民俗資料を使って追究する。鏡の研究がもっとも盛んな分野は考古学である。三角縁神獣鏡は古墳の副葬品として出土する場合が多いが、鏡を大量に埋納するすることの意味には議論がある。泉森氏は、遺体に悪しき霊が侵入することを防ぐためとするが、勝部氏は、地霊を鎮める地的宗儀の明器であると結論付ける。祭祀の場の鏡の用途は「神体」であることが多いが、なぜ鏡が神体となったかについて論じられることは少ない。大江氏は、多くの神社で鏡が神体として奉斎されるようになったのは、明治の神祇政策以来で、伊勢神宮の模倣であることを指摘する。金属でできた鏡を使用するうえで欠かすことができないのが、鏡磨きである。赤井氏は、農閑期に遍歴に出た村人としての鏡磨(かがみとぎ)について報告する。最後に小松氏は、鏡の民間信仰を分析し、鏡はこの世もあの世も含めた異界をうつしだすものだとする。人は鏡を通して、未来や過去をも見ているのである。
【収録論文】
※本書は、園田学園女子大学の公開学術セミナーの成果である。
T 鏡と王権
古墳に鏡を副葬する意味────泉森 皎
鏡の用途────勝部 明生
神体としての「鏡」―伊勢神宮を中心に―───大江 篤
U 鏡と民俗
氷見の村と鏡磨────赤井 孝史
鏡と信仰―民俗学からのアプローチ― ────小松 和彦
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