文書館問題研究会・横浜開港資料館編『歴史資料の保存と公開』
掲載誌:古代文化56-1(2004.1)


 本書は平成12年、当時開館20周年を迎えようとしていた横浜開港資料館が、歴史資料の保存と公開にかかわる諸問題の検討を文書館問題研究会に委託したことに端を発し、以後3年にわたっての研究会活動の成果を一書に纏められたものである。文書館問題研究会は、文書館・資料館・博物館等に所属するメンバーで構成され、歴史的文書、古文書、古記録の保存と公開などについて様々な議論を重ねられ、平成15年3月に解散された。

 本書は3部構成となっており、第1部では記録資料(アーカイブズ)の概念や公文書館法についての理解が得られ、また専門職員(アーキビスト)養成の必要性を国外の状況との比較などを盛り込み提唱されている。第2部、第3部はそれぞれ横浜市、神奈川県における歴史資料保存公開システムの現状と題して、横浜開港資料館をはじめ、神奈川県下の博物館や文書館の取り組みや活動が、県史・市史編纂事業や施設建立に関する市民の要望や市政との関連なども含め、各々の現状と課題が具に紹介されている。

 景気低迷の状態が続く昨今、各地の歴史資料保存施設が大変厳しい状況におかれていることは言うまでもない。本書は、予算や人員の削減が進むそれらの施設の実例をもとに、どのようにして機能を守り次の世代に歴史資料を伝えて行くことができるのか、歴史資料保存公開システム構築のための貴重な提言がなされている。こうした討論はとかく専門的で一般には理解しがたいように思われがちだが、関係者のみならず日頃資料館や文書館にて有益な資料や情報を享受している諸氏にとっては、決して避けては通れぬ問題であろう。一読をお勧めする。


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